2026/09/27 16:01

「最高の日常着」を目指して作られる、一本のジーンズ。

ヴィンテージデニムを見ていると、「これは新品では作れないな」と思うような一本に出会います。

生地の凹凸、インディゴの濃淡、穿き込まれた人の動きがそのまま残ったような色落ち。

FULLCOUNTが作っているデニムには、そんなヴィンテージデニムに通じる魅力があります。

ただ、FULLCOUNTの面白いところは、単純に古いジーンズを忠実に再現することだけを目的にしていないところ。

「ヴィンテージの雰囲気を持ちながら、毎日穿きたくなるジーンズを作る。」

そこにFULLCOUNTのデニム作りの面白さがあると思います。





FULLCOUNTのスタート

FULLCOUNTは1992年に大阪で辻田幹晴氏によってスタートしました。その頃は日本のヴィンテージデニム・レプリカ文化が大きく盛り上がっていった時代です。


辻田氏は、当時のヴィンテージデニムを研究し、ただ形を真似するのではなく、

「なぜ、このデニムはこんな風に色落ちするのか?」

「なぜ、昔のジーンズはこんなに穿きやすいのか?」

「どうすれば、あの生地の雰囲気を再現できるのか?」

というところまで掘り下げていったそうです。

その答えを探す中で、FULLCOUNTが辿り着いたもののひとつが、ジンバブエコットンでした。





ジンバブエコットンという選択

FULLCOUNTのデニムを語るうえで外せないのが、ジンバブエコットン。

一般的なコットンと大きく違うのは、その繊維の長さです。

FULLCOUNTが使用するジンバブエコットンは超長綿と呼ばれる長い繊維を持ち、手摘みで収穫されます。

辻田氏自身の説明によれば、ジンバブエでは一年に一度収穫する「一毛作」にこだわり、長く育った綿花を手で摘むことで繊維を傷めないことを重視しているそうです。

ここが、FULLCOUNTらしさの面白いところ。

当時、ジンバブエコットンは「柔らかすぎてジーンズには向かない」と考えられることもありました。

でもFULLCOUNTは、そこを逆に考えた。

柔らかい素材だからこそ、ヴィンテージのような糸の作り方や織り方を組み合わせれば、理想のジーンズになるのではないか。

そうして生まれたのが、FULLCOUNT独特の「柔らかいのに、しっかりとしたデニム」です。





古い織機で、ゆっくり織る

良いコットンを使えば、それだけで良いデニムになるわけではありません。

次にFULLCOUNTがこだわったのが、生地を織る機械でした。

現在の高速織機なら、もっと効率よく、もっと大量に生地を作ることができます。

しかしFULLCOUNTが選んだのは、岡山県に残っていた古い力織機。

現在のFULLCOUNTの公式発信によれば、創業当時、辻田氏は同業者とともに国内のデニム工場を探し、旧式の力織機を使い続けていた工場に出会いました。

工場側が新しい織機への移行を検討していた中で、継続的に発注することを約束して、旧式織機を使った生産を続けてもらったとされています。

旧式の力織機は、とにかく遅い。
でも、その「遅さ」が大切だった。
糸に無理なテンションをかけず、ゆっくりと生地を織っていく。

その結果、ジンバブエコットンの持つ柔らかさやしなやかさを生かしながら、ヴィンテージデニムらしい凹凸のある生地が生まれます。

しかもFULLCOUNTでは、単純に「古い織機で織ればいい」というわけではありません。

工場に対して独自の織り方を指定しており、そのレシピは企業秘密。

素材、織機、そして織り方。この3つが組み合わさって、FULLCOUNT独自のデニムが作られています。





「硬いデニム=良いデニム」ではない

デニムというと、
「最初は硬くてゴワゴワしている」
「穿き込んで柔らかくする」

そんなイメージを持っている人も多いと思います。

FULLCOUNTは、そこにも少し違った答えを出しています。

ジンバブエコットンの長い繊維を使い、甘撚りの糸を作り、旧式織機でゆっくりと織る。

その結果、しっかりとしたコシを持ちながら、最初から柔らかく、身体に馴染みやすい生地になる。

だからFULLCOUNTのジーンズは、ヘビーオンスのモデルであっても「穿き始めから意外と楽」という感覚があります。

これは単なる「柔らかいジーンズ」という話ではありません。

長く穿き続けられることそのものを、デニムの価値として考えている。

そんなFULLCOUNTの考え方が、生地から伝わってきます。




色落ちは「作る」のではなく「穿いて作る」

そして、FULLCOUNTのもうひとつの魅力が色落ち。

新品の状態では、もちろん濃いインディゴ。
そこから毎日穿いて、座って、歩いて、バイクや車に乗って、洗濯して。

少しずつインディゴが抜けていきます。

生地の凹凸が身体の動きに合わせて擦れ、腿には縦方向の表情が出て、膝や腰まわりにはその人の生活が刻まれていく。

旧式織機で織られた生地の凹凸と、FULLCOUNT独自の糸・織りの組み合わせによって、ヴィンテージデニムを思わせる自然な色落ちが楽しめるのも特徴です。

だから同じFULLCOUNTでも、穿く人によって完成する一本は違います。

新品の状態が完成ではなく、穿き始めたところから完成に向かっていく。

それがデニムの面白さだと思います。






そして、実は「形」もかなり重要

生地の話ばかりになりがちなFULLCOUNTですが、個人的にはパターンもかなり重要な部分だと思います。

どれだけ素晴らしい生地を使っていても、穿きにくければ毎日は穿かない。

FULLCOUNTは、ヴィンテージのディテールを研究しながらも、現代の生活の中で穿くことを考えたシルエットを作ってきました。

腰まわり、股上、ワタリ、膝から裾にかけてのライン。
それぞれを組み合わせて、座ったり、歩いたり、しゃがんだりしたときに無理がない。

つまり、

「ヴィンテージっぽく見えること」だけではなく、「実際に毎日穿けること」。ここまで考えて、ようやく一本のジーンズになる。


FULLCOUNTが掲げてきた「最高の日常着」という考え方は、こういうところに表れているのだと思います。

また、人は体型や好みが異なりますね。

FULL COUNTでは、スタンダードなデニムパンツであっても、ワイドやストレート、テーパーにスリムシルエット等など、多くのコンセプトシルエットを用意し、穿く人にとっての”ベスト”を選択できるように対応しています。





良いジーンズは、生活の中で完成する

FULLCOUNTのデニムを見ていると、ヴィンテージを忠実に再現することと、ヴィンテージを超えていくことは、意外と近いところにあるのだと思います。

ジンバブエコットン。
手摘みという素材へのこだわり。
旧式の力織機。
ゆっくりと織られる生地。

職人による縫製。
そして、毎日穿くことを考えたパターン。


ひとつひとつを見ると、どれも非常に地味なこだわりです。

でも、それらが全部重なったときに、

「なんとなく、こればかり穿いてしまう。」

そんな一本になる。



新品のときは、まだ真っさらな状態です。

そこから穿く人の身体に馴染み、少しずつ柔らかくなり、色が変わり、傷が入り、直しながら付き合っていく。

最後には、その人にしか作れない一本になる。



FULLCOUNTのデニムは、ヴィンテージデニムを再現するためだけのジーンズではなく、

「毎日穿き続けたくなる、最高の日常着」を目指して作られている。

だからこそ、古着が好きな人にも、新しいデニムを育てたい人にも、一度試してもらいたい一本です。






「新品なのに、もう少し穿き込んだ先が楽しみになる。」

FULLCOUNTのデニムには、そんな不思議な魅力があります。

硬さや重さを競うのではなく、素材の良さを活かして、穿きやすく、長く穿けるものを作る。

そして10年後、20年後には、買ったときとはまったく違う表情になっている。

服は、着た時間まで含めて完成する。

そんなデニムの楽しみ方を教えてくれるブランドだと思います。